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記事: Designer’s Note

Designer’s Note

Designer’s Note

前回のDESIGNER’S NOTEでは、PACHMANのものづくりについてお話しさせていただきました。
今回は少し時間を遡りながら、PACHMANのはじまりについて、綴ってみたいと思います。
少し長くなりますが、よろしければお付き合いいただけると嬉しいです。

 

ウェディングドレスとの出会い。

大学を卒業して最初に勤めた会社では、仕事を通してウェディングの世界に触れる機会が多くありました。
もともと洋服が好きだった私が、その中でも特に惹かれたのが、ウェディングドレスの世界観でした。
繊細なレースや刺繍。
身体に沿う、美しいシルエット。
何層にも重ねられた生地。
そして、一着のドレスを纏うことで、女性の佇まいや表情まで変わっていくこと。
同じ「服」でありながら、日常で着る洋服とはまったく違うもの。
一着のために、これほど細かな仕事が重ねられていることにも惹かれ、
そこにある繊細さや美しさを、もっと日常の中で纏えるようなものにしたい。
いわば、ウェディングのリアルクローズのようなものをつくりたい。
そんなことを考えるようになりました。
そこで当時の私が興味を持ったのが、ランジェリーでした。
レースやチュール、繊細なディテール。
身体を美しく見せるためのパターン。
ウェディングドレスとは違うけれど、どこか通じる美しさがあるように感じていました。
それからというもの、フランスやポーランドのランジェリーを買い集めては、レースの使い方やフィット感、そこに表現される女性像の違いを見比べるようになりました。
身につけたときに感じる気持ちまで、ブランドによって異なるように思えたのです。
その奥深さをもっと知りたいと思い、会社に勤めながらアパレルの専門学校へ通い、ランジェリーを専門に学びました。

 

 

 

パリで見た、ひとつのコレクションができるまで。

そんな中、知人に声をかけていただき、2017年1月、YUMI KATSURA PARIS COLLECTIONのバックヤードをお手伝いする機会をいただきました。
私にとって、メゾンブランドの裏側を間近で見るのは初めての経験でした。
表から見れば、ほんのわずかな時間のショー。
けれど、その時間のために、それぞれの分野のプロフェッショナルが集まり、一つの世界をつくり上げていく。
洋服だけではなく、モデル、ヘアメイク、空間、演出。
それぞれが同じ方向を向き、一丸となって一つの世界観を完成させていく光景が、とても印象に残っています。
完成された一着の背景には、異なる分野のプロフェッショナルによる、緻密な積み重ねがある。
その裏側を目の当たりにしたことで、服そのものだけではなく、一つの世界観をつくり上げるということに、より強く惹かれるようになりました。
その後、フランスで過ごす中で、もう一つ自分の中で大きく変わったことがありました。
それまで私は、いつかランジェリーをつくりたいと思っていましたが、ランジェリー文化が根付くフランスには、私がつくりたいと思い描いていた世界が、すでに当たり前のように存在していました。
美しいランジェリーを、自分自身のために選ぶこと。
誰かに見せるためだけではなく、自分の気持ちを満たすために身につけること。
日本で大切に買い集めていたランジェリーが、この街では女性たちの日常的にごく自然に溶け込んでいました。
その光景を目にして、私がつくりたいと思っていたものは、ここにはすでに十分に存在しているのかもしれないと感じました。

 

 

 

「自分のために着る服」のはじまり。

日本へ帰り、のちにパートナーとなる友人に、ネグリジェブランドの構想を話しました。
本当にやりたいことというのは、こんなふうに迷いなく形になっていくのかもしれないと思うほど、すらすらと進んでいきました。
誰かに見せるためではなく、自分の時間のために着るもの。
家に帰って、お気に入りのランジェリーの上に袖を通したとき、少しだけ気分が上がるようなもの。
女性の美しさを内側から引き出し、自分自身の幸福感のために選ぶ服。
そしてそこには、私が最初に惹かれたウェディングドレスの繊細さや特別感も取り入れたいと思いました。
そうして立ち上げたのが、PACHMANの前身となるブランドです。
とはいえ、最初から今のようなものづくりができていたわけではありません。
最初につくったのは、たった3つのデザイン。
サイズはすべて、フリーサイズ。
当時の私は、それが一番多くの方に届けられる方法だと思っていたんです。

 

 

 

フリーサイズから気づいたこと。

最初のお披露目は、ランジェリーの合同展示会でした。
出店させていただき、本当にいろいろな方に手に取っていただき、実際に着ていただく機会がありました。
そこで初めて気づいたのが、同じ一着でも、着る人によって見え方がまったく違うということでした。
身長の高い方もいれば、小柄な方もいる。
同じ身長でも、身体のバランスはまったく違う。
ある方にはきれいに着ていただけても、別の方には丈が長い。
身幅はちょうどよくても、バストが合わない。
今思えば当たり前のことなのですが、服をつくり始めたばかりの私は、実際にいろいろな方に着ていただいて初めて、その当たり前を実感しました。
フリーサイズは「誰にでも合うサイズ」ではなく、たくさんの人の身体から導き出された、一つの平均値に近いものなのだと気づきました。
そして、
「着ることができる」と「その人が美しく着られる」は、まったく違う。
ということにも。
それなら、その人に合わせた一着を。
とてもシンプルな答えだったのかもしれません。
でも、そのときの私にとっては、今のPACHMANにつながる大きな気づきでした。
デザインした一着を、できるだけ多くの人が着られる形にするのではなく、
その人が一番美しく着られる形に近づけていく。
そこから少しずつ、今のPACHMANのものづくりへと変わっていきました。

 

 

 

特別な日に、より輝く一着を。

大切な日に袖を通したとき、その人自身がいつもより少し輝いて見える。
PACHMANは、そんなブランドでありたいと思っています。
オケージョンの場にきちんと馴染みながらも、どこかドラマティックで、人とは少し違う。
華美に飾るのではなく、シルエットやディテールによって、その人の佇まいを美しく見せる。
それが、PACHMANが目指しているお洋服です。
何年経ってもクローゼットに残り、
その一着を見ると、着ていた日の景色や、そのときの気持ちまで思い出せる。
そんなふうに、長く大切にしていただける一着をつくりたいと思っています。
PACHMANのお洋服は、予約受注を基本におつくりしています。
ご注文いただいてからお届けまで、お時間をいただきます。
すぐにお渡しすることができず、お待たせしてしまうことを申し訳なく思うこともありますが、それでもこの形を続けているのは、一着一着を大切につくりたいからです。
ご注文をいただいてから、
生地を裁断し、職人の手で縫い上げ、検品をして、ようやくお客様のもとへお届けする。
たくさんつくって、その中から選んでいただくのではなく、
選んでいただいた一着を、そこからつくる。
効率のいい方法ではないかもしれません。
けれどPACHMANにとっては、その時間も含めて「仕立てる」ということなのだと思っています。

 

 

 

自分のために、仕立てるという経験を。

振り返ってみると、最初から「ビスポークのブランドをつくろう」と思っていたわけではありません。
ウェディングドレスに魅了され、
ランジェリーを学び、
パリでブランドの裏側を見て、
フランスの文化に触れ、
ネグリジェをつくり、
そして実際にお客様に着ていただいた。
一つひとつの経験の中で生まれた、
「もっとこうしたい。」
という気持ちを重ねていった先に、今のPACHMANがあります。
男性がスーツを仕立てるように。
女性にも、自分のために一着を仕立てるという経験を、もっと身近に感じていただきたい。
自分の身体に合うものを選び、
自分のためにつくられる時間を待ち、
完成した一着に袖を通す。
その一連の時間まで含めて、PACHMANでお洋服を選ぶ楽しさになれば嬉しいです。
特別な日のために、自分のための一着を仕立てる。
PACHMANがこれからも、そんな経験をお届けできるブランドでありたいと思っています。

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こうして振り返ると、PACHMANをつくろうと思って始めたわけではなかった一つひとつの経験が、不思議なくらい今につながっているように感じます。
そして、その原点をさらに遡ると、母の存在もあったのかもしれません。
母はCHANELが大好きで、学生の頃の私は、まだその価値もよく分からないまま、母のツイードのセットアップを借りて出かけていました。
今思えば、当時の私にはずいぶん背伸びをした装いで、着こなすというより、洋服に着られていたのだと思います(笑)

 

それでも、袖を通したときに感じた高揚感や、洋服によっていつもとは違う自分になれるような感覚は、今も覚えています。
大人になってからは、パリへ訪れると、メゾンの服に触れることを楽しみにしています。
一着の中に込められた美意識を見つけ、その背景にあるものづくりを想像する時間が、私は今も変わらず大好きです。

 

ブランドを始めた頃には、分からなかったこともたくさんありました。
むしろ、分からなかったからこそ、実際にお客様に着ていただき、そこで生まれた気づきを一つずつ形にしながら、今のPACHMANに辿り着けたのだと思います。
そして今も、PACHMANは完成したブランドだとは思っていません。
お客様と出会い、職人の方々とものづくりを重ねながら、これからも少しずつ変わり続けていくのだと思います。
それでも、最初に抱いた、
「纏う人自身が、自分を美しいと思えるものをつくりたい。」
という気持ちだけは、ずっと変わっていません。
これからも、大好きな洋服をつくれることへの喜びを忘れず、一着一着に向き合いながら、PACHMANらしいものづくりを続けていきたいと思っています。
有難うございました。